Nyman S, Westfelt E, Sarhed G and Karring T: Role of “diseased” root cementum in
healing following treatment of periodontal disease. A clinical study. J Clin Periodontol,
1988, 15:464-468
この研究も40年前ほど昔に行われたものです。
歯周病の進行した歯に対して歯周外科を行って、徹底的に根の周りの歯石の除去だけを行ったグループと、歯石の除去に加えて根の周りのセメント質も完全に除去されたグループで治療後の歯茎の状態を比較したものです。
結果は、どちらのグループでも良好な歯周組織の改善が認められた。また、明確な違いもなかった。このことから、根の周りのセメント質の除去は必ずしも必要ではないと結論付けられた。
歯周病の治療では、「歯石だけでなく、歯の根の表面までしっかり削ってきれいにする」というルートプレーニングという処置が行われることがあります。
けれど最近では、「根の周りの歯石と歯垢(プラーク)だけを取る」ことに集中するようになっています。
この研究で私が印象的だったのは、「汚れているとされる根の周り(セメント質)を削らなくても、歯ぐきの健康はしっかり戻ってきた」という結果でした。
従来は、歯石と一緒にその下のセメント質も取り除くことが常識とされていました。私が大学生の頃はそのように習いました。ですが、丁寧に歯石だけを取り除いて、あとは体の自然な治癒力を信じて見守ることで、プラークや出血、ポケットの深さがきちんと改善したのです。
また、大学生の頃に院内実習にて治療の見学をしている時、下の前歯が歯周病の治療の行いすぎで歯が細くなり今にも折れそうな状態を見て、衝撃を受けたことを今も覚えています。
ひのまる歯科では、歯石を取る際に「どこまで取るか」を常に慎重に判断しています。
特に、歯ぐきの中の根の表面(セメント質)はなるべく触れないように、表面の歯石のみを除去するように慎重に行います。
セメント質を削ってしまうと、かえって歯ぐきが下がったり、歯がしみる症状が出るリスクが高まるからです。
「よく治すこと」と「優しく治すこと」は両立できます。
ひのまる歯科では、できるだけ自然に治ろうとする力を引き出す治療を大切にしています。
千駄木近隣にて、お口の健康や歯周病について不安なこと、気になることがある方は是非一度ご連絡ください。