Irena Sailer, Sven Mühlemann, Marcel Zwahlen, Christoph H F Hämmerle, David Schneider.
Cemented and screw-retained implant reconstructions: a systematic review of the survival and
complication rates. Clin Oral Implants Res. 2012 Oct:23 Suppl 6:163-201. PMID: 23062142
インプラントの被せ物には、2つの固定方法があります。スクリュー固定型とセメント固定型です。見た目はどちらも自然ですが、治療後の安定性やトラブルの起こりやすさに違いがあることをご存じでしょうか?
今回は、これまでに行われた多くの臨床研究をまとめた論文をもとに、「どちらの固定方法が安心できるのか」について解説します。
この調査は、約60本の信頼できる臨床研究を分析し、スクリュー固定型とセメント固定型の5年後のインプラントの生存率やトラブルの起こりやすさ(合併症率)を比較したものです。
主な結果は以下のとおりです。
● 5年後の生存率
・セメント固定型単冠:96.5%
・スクリュー固定型単冠:89.3%
(差はあるものの統計的に有意ではない)
・部分的なブリッジ型:セメント96.9%/スクリュー98%
・全体のブリッジ型:セメント100%/スクリュー95.8%
(いずれも差は統計的に有意ではない)
つまり、生存率だけで見ると、どちらも高い成功率を示しているといえます。
しかし、注目すべきは合併症の違いです。
● 技術的な合併症(部品の破損やネジの緩みなど)
・スクリュー固定型でやや多い傾向
● 生物学的な合併症(インプラント周囲の骨の吸収など)
・セメント固定型で多く、骨吸収が2mm以上進んだケースが報告されていました
・スクリュー固定型では5年間で骨吸収の報告はゼロ
この差はなぜ生まれるのでしょうか?
セメント固定型は、一見シンプルに見えても、セメントが歯ぐきの奥に入り込んで炎症を起こすリスクがあります。これが周囲の骨を溶かす原因となることもあります。
一方、スクリュー固定型はネジで直接留めているため、必要に応じて取り外して清掃や修理がしやすいというメリットがあります。つまり、もし問題が起きても再治療や調整がしやすく、長期的に管理しやすいのです。
ひのまる歯科では、インプラントの固定方法についても一人ひとりの状況に応じて慎重に判断しています。特に骨の状態や審美性への配慮、メンテナンス性などを踏まえ、基本的にはスクリュー固定を推奨しています。
気になることがあれば、ひのまる歯科までお気軽にご相談ください。