Thomas G Wilson Jr. The positive relationship between excess cement and peri-implant disease: a
prospective clinical endoscopic study. J Periodontol. 2009 Sep;80(9):1388-92. PMID: 19722787
インプラント治療を受けたあとに、歯ぐきの腫れや出血、違和感が続く場合、「インプラント周囲炎」という状態に進行していることがあります。実はその原因のひとつに、見えない場所に残ったセメントが関係していることがあるのです。
これは、セメント固定型のインプラント補綴物(人工の歯)においてとくに注意すべきポイントです。
アメリカの歯周病専門医、Thomas G. Wilson Jr. が行った臨床研究では、セメントの残留とインプラント周囲炎の関係を検証しています。
研究の対象は、すでにインプラント周囲に炎症の兆候が見られる患者39人。そのうち12人は、同じ口の中に炎症のないインプラントも持っており、それが比較対象(コントロール)として使われました。
合計42本の炎症のあるインプラントを検査したところ、実に81%(34本)で過剰なセメントの残留が確認されました。対して、炎症のないインプラントからは一切セメントは見つかりませんでした。
さらに興味深いのはその後の経過です。
セメントを取り除いたインプラント(33本)のうち、74%(25本)で炎症の症状が自然に消失しました。これは、セメントが体にとって“異物”であり、インプラント周囲炎の引き金になっていた可能性が高いことを示しています。
この結果から、セメントが目に見えない歯ぐきの中に残ってしまうことのリスクが、明確に浮かび上がりました。
ひのまる歯科では、セメント固定型インプラントを行う際も、専用の器具を用いてセメント除去を徹底しています。また、症例に応じてスクリュー固定型を選択することで、将来的なリスクを最小限に抑える治療方針をとっています。
もし、インプラントの周囲に腫れや出血が見られるようであれば、セメントの残留が原因かもしれません。
インプラントを長持ちさせるためには、こうした見えない原因への気づきと対策が大切です。違和感を我慢せず、早めに歯科医院でご相談ください。