Bjarni E Pjetursson, Nicola A Valente, Malin Strasding, Marcel Zwahlen, Shiming Liu, Irena Sailer.
A systematic review of the survival and complication rates of zirconia-ceramic and metal-ceramic single
crowns. Clin Oral Implants Res. 2018 Oct:29 Suppl 16:199-214. PMID: 30328190
インプラントの手術が無事に終わったあと、最終的にお口の中に装着する「被せ物=インプラントクラウン」の素材選びは、長期的な安定性や見た目に関わる重要なステップです。
今回は、メタルセラミッククラウン(PFM)とジルコニアセラミッククラウン(PFZ)これらの素材に関する大規模なシステマティックレビューの結果をもとに、比較と選び方のポイントをわかりやすくご紹介します。
【インプラントクラウンの2大選択肢】
インプラントに装着するクラウンには、大きく分けて次の2つの選択肢があります。
・メタルセラミッククラウン(PFM)
・ジルコニアセラミッククラウン(PFZ)
どちらも見た目は自然に仕上がりますが、それぞれに特徴があります。
【生存率はどちらも非常に高い】
この分野での代表的な研究では、約5000本のクラウンに関する35の臨床研究を集計して比較しています。
その結果、5年間のクラウンの生存率は以下の通りでした。
・メタルセラミック:98.3%
・ジルコニアセラミック:97.6%
数字上ではわずかにメタルセラミックが高いものの、どちらも非常に高い成績を示しており、安心して選べる素材です。
【審美的な問題はジルコニアに軍配】
審美性を求める方にとって、ジルコニアの魅力は大きいといえます。メタルセラミックは内部に金属を使っているため、歯ぐきが薄い場合に金属色がうっすら見えることがあります。一方、ジルコニアは金属を含まないため、より自然で美しい見た目を保ちやすいです。
研究でも、審美的なトラブル(色調の不調和や歯ぐきの透けなど)はジルコニアの方が少ない傾向が見られました。
【チッピングの発生率はほぼ同じ】
被せ物の表面に施された陶材(ベニア)が欠ける「チッピング」は、どちらの素材でも起こりうるトラブルです。
5年間での発生率は、
・メタルセラミック:2.9%
・ジルコニアセラミック:2.8%
という結果で、大きな差はありませんでした。つまり、チッピングの頻度においては、どちらを選んでも大きな違いはないと考えられます。
【ジルコニアは破折のリスクがやや高い】
気をつけるべき違いは、「破折(クラウン自体が割れてしまう)」に関してです。
・ジルコニアクラウン:破折率 2.1%
・メタルセラミッククラウン:破折率 0.2%
ジルコニアは硬い一方で、衝撃に対して脆い性質があるため、強い噛みしめや過度な力が加わる方では注意が必要です。
【選ぶときのポイント】
インプラント治療をご検討の方がクラウンを選ぶ際は、次の点を考慮されるとよいでしょう。
・見た目の美しさを最重視したい方:ジルコニア
・力が強く、奥歯でしっかり噛む方:メタルセラミック
・長期的な安定性と審美性のバランスを求める方:担当医と症例に応じて相談
また、最近では「モノリシックジルコニア」といって、1つの素材で作られたクラウンも登場しています。チッピングのリスクが低い一方、長期成績のデータがまだ限られているため、慎重な選択が必要です。
【ひのまる歯科では】
ひのまる歯科では、インプラント治療後のクラウン選びについても、患者さんの噛み合わせや見た目の希望をしっかり伺いながら、最適な素材をご提案しています。
素材選びで後悔しないためのカウンセリングと診断を丁寧に行っていますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。