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2025.06.24

「48時間あけても大丈夫」は本当?──50年前の“実験”から読み解く、今日の歯みがきルール

Lang NP , Cumming BR, and Loe H
Toothbrushing Frequency as It Relates to Plaque Development and
Gingival Health. J Periodontol 1973;44(7):396-405

ネットでときどき見かける

「プラークは48時間たたないと炎症を起こさない=歯みがきは1日おきでも平気」

という話。


その根拠としてよく引用されるのが、1973年の Lang らの研究です。

でも、当時の実験条件は 現在の私たちの日常とは大きく異なります

誤解を避けるために、ポイントを整理してお伝えします。


1. そもそもどんな研究だったの?

  • 50年以上前、歯学部の学生32名が対象

  • 実験前に歯科衛生士が専用器具で完全にプラークを除去

  • その後、学生を4グループに分けて

    • 12時間ごと

    • 48時間ごと

    • 72時間ごと

    • 96時間ごと

      にプロのチェック付きで歯みがきを実施

  • 歯ぐきの炎症(歯肉炎)がいつ現れるかを観察

結果

  • 48時間ごとのグループまでは大きな炎症が出ず、

  • 72時間(3日)を超えると歯肉炎が確認された


2. なぜ日常には当てはまらないの?

実験環境 私たちの日常
研究施設で 衛生士が毎回チェック 自宅でセルフケア+忙しい生活
参加者は 健康な若年層 年齢・持病・歯並びなど人それぞれ
使用したのは 当時の歯ブラシ、専用器具 今は電動ブラシや歯間ブラシなど多様
歯石や虫歯、被せ物など 複雑なリスク要因なし 実際は詰め物・インプラント・矯正装置など多数

要するに「実験室で完璧に磨き残しゼロの状態」 を再現できた場合の話。

普段の生活で「48時間空けてもOK」とは言えません。


3. 2025年・最新のセルフケア指針

  1. 1日2回(朝・寝る前)の歯みがき

  2. 歯間ブラシやフロスは1日1回

    • 歯ぐきの炎症はまず“歯と歯の間”から始まります

  3. リスクに応じたプロフェッショナルケア

    • 歯周病の既往・喫煙・矯正中は 3〜4か月ごと

    • 普通のリスクでも 6か月ごとが目安

  4. ブラッシング法は「バス法」や電動ブラシなど自分に合った方法を歯科医院で確認


4. まとめ──“48時間ルール”より大切なこと

  • Lang らの研究は 「プラークがゼロの状態を完全に作れれば48時間は炎症が出にくい」 という実験的な示唆にすぎません。

  • 実際には、食事・唾液・生活習慣・詰め物の段差など プラークの再付着要因が山ほどあります。

  • 毎日の丁寧なセルフケア+定期メインテナンス が、歯ぐきと歯を守る最善策です。


ちょっと一言

「48時間あけても大丈夫」という情報を鵜呑みにせず、今日からまた“いつもの”歯みがき&フロスを続けましょう。

わからないことはお気軽に当院の歯科衛生士にご相談ください!

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