Lang NP , Cumming BR, and Loe H
Toothbrushing Frequency as It Relates to Plaque Development and
Gingival Health. J Periodontol 1973;44(7):396-405
ネットでときどき見かける
「プラークは48時間たたないと炎症を起こさない=歯みがきは1日おきでも平気」
という話。
その根拠としてよく引用されるのが、1973年の Lang らの研究です。
でも、当時の実験条件は 現在の私たちの日常とは大きく異なります。
誤解を避けるために、ポイントを整理してお伝えします。
1. そもそもどんな研究だったの?
-
50年以上前、歯学部の学生32名が対象
-
実験前に歯科衛生士が専用器具で完全にプラークを除去
-
その後、学生を4グループに分けて
-
12時間ごと
-
48時間ごと
-
72時間ごと
-
96時間ごと
にプロのチェック付きで歯みがきを実施
-
-
歯ぐきの炎症(歯肉炎)がいつ現れるかを観察
結果
-
48時間ごとのグループまでは大きな炎症が出ず、
-
72時間(3日)を超えると歯肉炎が確認された
2. なぜ日常には当てはまらないの?
実験環境 | 私たちの日常 |
---|---|
研究施設で 衛生士が毎回チェック | 自宅でセルフケア+忙しい生活 |
参加者は 健康な若年層 | 年齢・持病・歯並びなど人それぞれ |
使用したのは 当時の歯ブラシ、専用器具 | 今は電動ブラシや歯間ブラシなど多様 |
歯石や虫歯、被せ物など 複雑なリスク要因なし | 実際は詰め物・インプラント・矯正装置など多数 |
要するに「実験室で完璧に磨き残しゼロの状態」 を再現できた場合の話。
普段の生活で「48時間空けてもOK」とは言えません。
3. 2025年・最新のセルフケア指針
-
1日2回(朝・寝る前)の歯みがき
-
歯間ブラシやフロスは1日1回
-
歯ぐきの炎症はまず“歯と歯の間”から始まります
-
-
リスクに応じたプロフェッショナルケア
-
歯周病の既往・喫煙・矯正中は 3〜4か月ごと
-
普通のリスクでも 6か月ごとが目安
-
-
ブラッシング法は「バス法」や電動ブラシなど自分に合った方法を歯科医院で確認
4. まとめ──“48時間ルール”より大切なこと
-
Lang らの研究は 「プラークがゼロの状態を完全に作れれば48時間は炎症が出にくい」 という実験的な示唆にすぎません。
-
実際には、食事・唾液・生活習慣・詰め物の段差など プラークの再付着要因が山ほどあります。
-
毎日の丁寧なセルフケア+定期メインテナンス が、歯ぐきと歯を守る最善策です。
ちょっと一言
「48時間あけても大丈夫」という情報を鵜呑みにせず、今日からまた“いつもの”歯みがき&フロスを続けましょう。
わからないことはお気軽に当院の歯科衛生士にご相談ください!